近未来航法

予測不能な現代社会を生き抜く知的サバイバル術

批評

写真鑑賞論⑤ ~写真は語り、そして踊る~

久しぶりに写真鑑賞論の続きを書こう。今回から写真を鑑賞する上での媒体論に入っていく。まず言っておきたいことは、俺自身が写真集という媒体にとことん魅せられた人間だから、その他の鑑賞法についてどこまで語れるかわからんし、基本的な知識が欠如して…

駆け抜ける、二発の弾丸

過去に見た映画の中でもっとも印象的なオープニングだったのが、アンドリュー・ニコル監督作品『ロード・オブ・ウォー』だった。実在する武器商人の半生を描いた映画なんだが、その冒頭、製造されてから着弾するまでの“銃弾”の視点で兵器の一生を映像化して…

築地ワンダーランド ~選び抜く生き方~

マルクスによる資本論の冒頭は、次の一文からはじまる。 資本主義的生産様式が支配している社会の富は『商品の巨大な集積』として現れ、個々の商品はその富の要素形態として現れる これだけ世の中に良い商品や他にない製品が溢れている現代。これ以上、躍起…

写真集『Songbook』/Alec Soth

去年見た中でのベスト写真集は?と問われれば、迷いなく挙げる1冊がある。世間的に大変な評価を受けている時代の寵児による作品集ではあるのだけれど、<彼>について多くを知っているわけではないし俺は熱烈なファンでもない。むしろ<彼>が何を表現しようとし…

写真鑑賞論④ ~レンズが見つめる先~

そもそものアートとしての写真の定義から始めて(第1回)、写真芸術の読み解きの例示(第2回)、そして写真編集(第3回)について言及してきた写真鑑賞論の4回目。今回は表現形式としてのジャンルについて論を進めてみたいと思う。前回の写真編集も同様だが…

写真集『EUROMAIDAN』/Vladislav Krasnoshek and Sergiy Lebedynskyy

なるべく政治的な思想や意見は公な場で公言するつもりはないんだけど。思ったことはなるべく自身の心の裡に抱いたまま忖度する、そんなことを美徳とする日本人という民族に民主政治は可能なのだろうか。今回の衆院選の結果を総括する報道を見つつ、そんなこ…

嗜好症者のジレンマ、ビエルサの見る夢

「彼の言葉の数々は私を恐懼させた。それは尊敬からくるものだと思うが…。正直、彼が行き着いているフットボールの境地を、私では計り知ることができなかった。」 「私たち(監督)はどれだけのトロフィーを獲得したかで評価される。どれだけサッカーに影響…

写真集『After the Firebird』/Ekaterina Vasilyeva

久々に写真集を買ってしまったぜよ…。かつては物質の亡者だったが“所有”の解体と題して、物欲のおもむくままに買い集めてモノを貯め込むことをやめたのだが。いやあ、やっぱり魅惑的な視覚体験への誘いに抗うことはできず。そもそもが、いわゆる「ダミーブッ…

写真鑑賞論③ 〜アートのカタチ〜

脱線ばっかで、ひさかたぶりとなる写真鑑賞論の第三弾。被写体の向こう側に透けて見える写真家の視点や観念、思想に着目せよというのが前回の記事での論旨だったんだけど。こむずかしいこと言ってるようで、実は。こむずかしく考えないように、ただ目の前の…

今こそ日本語ラップは夜明けに還れ

約20年にわたって、その偉大すぎる背中を追い続けている孤高のサウンドクリエイター、DJ KRUSHがソロ活動25周年の節目にニューアルバムを発表した。11年の時を経て発表された昨年の『BUTTERFLY EFFECT』から矢継ぎ早のリリースとなった今作は自身初となるラ…

国際関係論で観るワールド・サッカー

来年のワールドカップの行方をうらなう前哨戦、コンフェデレーションズカップもいよいよ大詰めで4強が出揃った。個性際立つ監督たちの手腕と世界トップレベルのテクニシャンがしのぎを削る欧州リーグも好きなんだけど、なんといってもお国柄が顕著に出るナシ…

写真鑑賞論② 〜被写体の向こう側〜

前回の続き。じゃあ、どういう写真が「アート(表現)」といえるのか。その具体的な例示と読み解きをしてみようと思うんだわ。 www.sandinista.xyz ここに1枚の写真がある。まずはなんの先入観も持たずに眺めてみてほしい。 1970年代にアメリカで興った「ニ…

写真鑑賞論① 〜それはアートではない!〜

「写真」との関わりはこれまでの記事で幾度か挙げてきた。写真というメディアの可能性、面白さというのは現存する芸術分野の中でも際立ったものでありながら、その魅力を十全に感じるには絵画や舞台芸術と同様に鑑賞者側にある程度のリテラシーとインテリジ…

かぎりなき仄暗さの臨界 -映画『神々のたそがれ』-

「すべてが初めて見る画面という、異形の映画。ストーリーはゆったりと進むものの、画面上に写っている情報量は半端ない。絶え間なく隅々まで、あらゆることがひたすら同時に起こり、3時間、みっちり埋め尽くすカオス。」と、映画系女子こと真魚八重子も激賞…

象形文字化する現代の言語コミュニケーション

以下は「現代における言語コミュニケーションとは」というお題で、数年前に某所からコメントを求められ1000文字でまとめた論考。字数制限があったので問題意識のみにフォーカスし、具体的な対応策には言及していない。しかし、ここで書いた状況は2、3年を経…