近未来航法

予測不能な現代社会を生き抜く知的サバイバル術

集中力を極限まで高めるメディテーションBGM5選

社会生活を営むうえで誰にも極度の集中力を必要とするシチュエーションというのがある。それはたとえば就・転職の面接だったり、商談、高所作業、作品制作、舞台挨拶、プロポーズ…など例示の枚挙にいとまがない。そんなとき、人はどのようにして緊張を解きほぐし、感覚を研ぎ澄ませ、覚悟を決めて人生の大舞台に臨んでいるのだろう。

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集中するにはまずリラックスすることが近道だということを誰もが知っている。脳はリラックスしているときの方が潜在能力を引き出しやすく集中が持続しやすいのだ。翻って緊張状態の中で強いられる集中状態は脳の特定部分が活発化しているだけで、90分が限界ともいわれるようにエネルギーの消耗が激しい。つまるところ、睡眠時に出やすい脳波である「α波」は本当の意味で集中状態に入っているときにも見られる波形なのだ。

 

では、どのようにすれば脳はリラックスしやすいのだろうか。多くの人がリラックスする、気分を変えるためにすることが音楽を聴くということだ。人それぞれに好きなジャンルや奏者というものが存在するので、「これを聴けばリラックスできる」というのも十人十色。しかし、ある程度はリラックスしやすい、α波を誘発しやすいジャンルというものが存在する。鍵を握るのは「倍音」という振動数を持つ音素だ。

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音という要素はそもそも周波数として現れ、耳に伝わってくる。倍音とは一般的な高音域(基音)といわれる周波数帯の整数倍以上の周波数をもつ帯域だ。周波数は3次元的には感知することのできない自然現象だから、倍音が発見されたのは意外にも17世紀に入ってからのことだった。昔から音楽鑑賞中に聴こえるはずのない高音が聴こえたという人が存在していて、それらの事例は「天使の声を聞いた」としばしば報告されていたのだが、これは倍音による効果が原因だと考えられている。

 

今回はこの倍音をキーポイントにして、俺がリラックスしたいとき、集中したいときに聴いているものを紹介してみようと思う。ただし決して一般的とはいえない、かなりマニアックなジャンルやアーティストばかりだから聴くだけで「非日常」に身を置くことができる。さらには民族的な楽器や音素によって多くが構成されているので、かなりの高確率でゾーンや変性意識に入ってもらうことが可能だと思う。

 

①妙花 能楽囃子 ~静と動の世界~

妙花 能楽囃子 ?静と動の世界?

妙花 能楽囃子 ?静と動の世界?

  • アーティスト: 寺井久八郎,一噌幸政,敷村鉄雄,亀井忠雄,小寺佐七
  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 1989/05/21
  • メディア: CD
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 能楽が好きで以前の記事でも取り上げたことがある。なんといっても、芸の中に埋め込まれた幽玄の格式的な美しさ、表現手法、精神性すべてに魅了される。はじめて能楽鑑賞される方の大多数は鑑賞中に眠気におそわれ寝落ちしてしまうものなのだが、実は能楽における囃子(オーケストラ)、地謡(コーラス)には多分に倍音が含まれているからなのだ。くわえて拍よりも間を重視し、無拍のリズムや、拍の伸縮や省略が多用され、まさに序破急な静と動の世界が堪能できる。

 

このCDがすばらしいのは能の囃子だけではなく、舞っているシテ方の動作音、衣ずれ、足踏み、足のハコビによって舞台が軋む音まであらゆる音が収録され、能独特の美学が音という側面から凝縮されているところだ。

 

②観世流謡曲名曲撰(6)敦盛/賀茂

観世流二十五世宗家観世元正監修 観世流謡曲名曲撰(6)敦盛/賀茂

観世流二十五世宗家観世元正監修 観世流謡曲名曲撰(6)敦盛/賀茂

  • アーティスト: 野村四郎,藤波重満,武田志房,観世恭秀,武田宗和,谷村一太郎,藤井完治,坂井音重,大江将董
  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 2004/12/22
  • メディア: CD
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こちらは能における謡だけを収めたもので、「敦盛」と「賀茂」の2曲を収録。観世流とは能の大成者である観阿弥・世阿弥に端を発する宗家の保守本流。「人間五十年 下天の内をくらぶれば・・・」という一節が有名な「敦盛」、ちなみに織田信長が謡い舞ったとされるのは能ではなく幸若舞という芸事だったとされる。先の一節は能の謡には出てこない。一方の「賀茂」は天下人・豊臣秀吉が好んだといわれる演目だ。

 

「敦盛」は、もともとは源氏の武将でありながら出家し僧侶となったワキ役が平敦盛の菩提を弔うため摂津国須磨ノ浦に赴き、夜、読経していると敦盛の霊が現れて、平家一門の栄枯盛衰を語るというもので、諸行無常の儚さが世界観の中に見事に表現されていてとくに好きな演目のひとつだ。


能 敦盛1

 

③Call It What You Like/Ho'Omalu, Mark Keali'i

Call It What You Like

Call It What You Like

 

フラの革命児といわれているマーク・ケアリイ・ホオマルの作品。実はフラダンスには2つの流れがあって、一般的に認知されているフラダンスは「アウアナ」と呼ばれるモダンなスタイルのもの。一方、「カヒコ」といわれるトラディショナルな流れのものが存在していて、こちらは日本の能楽と同様、もともとは神事を起源とするスピリチュアルなものだ。

 

昔、たまたまテレビでこのアーティストの演奏と踊りを観たのがきっかけだが、カヒコをベースにした彼のパフォーマンスはとにかく神秘的で激しかった。それ以来ずっと聴き続けているが、低音の効いた渋い声が魅力的で、まるでハワイの大地に吸い込まれるかのような包容力と土臭さがたまらない。


Mark Keali'i Ho'omalu Waimanalo at sunrise

 

 

④インディアン・スピリット/舩木卓也

インディアン・スピリット

インディアン・スピリット

  • 作者: マイケル・オレン・フィッツジェラルド,ジュディス・フィッツジェラルド,山川純子
  • 出版社/メーカー: めるくまーる
  • 発売日: 2011/02/10
  • メディア: 単行本
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インディアンフルート奏者・舩木卓也さんの楽曲が収録されたもので、ネイティブ・アメリカンの長老たちの教えを収録した書籍に付属されているCD。残念ながら音源のみでは入手不可能なのだが、本もまた素晴らしい内容なのでおすすめ。すべての楽曲がインディアンフルートの独奏で、30分超を聴かせるという圧巻の内容。

 

土着の楽器の澄んだ音色ときれいなメロディの中に、インディアンの自然観が読みとれる。いい音楽というのはなんとなく情景がイメージの中に生起するものだが、このアルバムを聴いているとアメリカ中西部の荒野に拡がる雲のない青空が脳裏に浮かび上がってくるのだ。

 

⑤Soul Of Rite/GOMA 

Soul of Rite

Soul of Rite

 

 数奇な運命を生きる孤高の日本人ディジュリドゥ奏者、GOMA氏のアルバム。ディジュリドゥというのはオーストラリア先住民、アボリジニに伝わる金管楽器で世界最古の管楽器といわれている。地を這うような独特の音色は聴けば聴くほどにクセになり、深い瞑想世界へとオーディエンスを誘ってくれる。

 

ビル・ラズウェル、森雅樹(EGO-WRAPPIN')といった多彩な客演陣との共演も魅力的で、単なる民族音楽に留まることなくダンスミュージックとの邂逅によってその活動を独自の音楽へと今も昇華し続けている。海外録音がほとんどだった自身初となる国内レコーディングで心機一転した記念碑的作品。


GOMA & The Jungle Rhythm Section . Afro Sand

 

最後に

以上が集中力を極限まで高めてくれる、純度100%のメディテーションBGMだ。自宅での坐禅や瞑想の前に、勉強や読書の前のひとときに、負けられない柔術の試合の前に聴いて、ガンガンに集中力を高めてくれ。グッド・トリップを保証するよ。

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能力の9割は「集中力」で決まる 集中力を高める32のメソッド――その実証

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「自分」を浄化する坐禅入門 (PHP文庫)

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