近未来航法

予測不能な現代社会を生き抜く知的サバイバル術

“帝王学”を学べ!

冷酷な云い方だが、他人と同じことをしていては人並み以上の人生なんて手に入らない。慰めのように金のかからない趣味に没頭したり、自己欺瞞的な消費を繰り返して現実から逃げてるだけの人生。少なくない妥協と隣り合わせのクソみたいな生活から抜け出すには、突き抜けた行動が必要だ。多くの人は、この事実にちゃんと向き合っていない。必要なのは現実を直視すること、そして行動だ。足りない脳みそは補強しろ。エゴを捨てて現実と向き合え!

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多くの人が自己啓発の一環として読んでいるビジネススキルや処世術に関する読み物は、そのほとんどがより良く現代社会を生きることを目的に、あんたが企業や組織の「使用人」であることを前提にして書かれている。これからの時代にはこういう能力が必要だ、シンギュラリティ後に訪れる世界で求められる働き方はこうだ…等など、耳ざわりのいい美辞麗句がならべられるが、その実、いかに企業のなかで使用人として生き残っていくかを説いているにすぎない。

 

かりに起業や独立をうながす実用書であっても、流行り物のビジネスモデルに乗っかってしまうか、会社組織でつちかった経験や環境をどのようにして売り物にするかを扱っただけの、それまでの人生の延長線上としての発想しか持ち合わせてないものが多い。しかし自らの生き残りと人生を賭けて、他者とは違う独自のレールを敷くという作業は、云わば人生を“コントロール”するということに他ならない。どっぷりと使用人の発想に浸かったやり方では、他人はおろか自分の人生すらもコントロールすることはできない。“コントロール”とは、支配者の論理なのだ。

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使用人という呪縛から脱却し、自分の人生を手に入れるには、支配者、統治者の発想が必要だ。自分という存在をどのように社会のなかで位置づければよいのか。自分が世の中に提供できる価値とは何か。自らの運命をどう切り拓くべきか。それは企業の庇護のもとで生きる使用人には不要な知識であり、理解の及ばない叡智なので一般的に語られることも少ない。支配者のための体系的知識を必要とするのは、社会的にもほんのひと握りの層なので、大量消費を前提とするマスマーケティングでは需要がないのだ。だから、支配者のために語られる知恵が市場に出回ることはほぼない。

 

しかしながら、古代中国には王家や伝統ある家系・家柄など、特別な地位の跡継ぎに対する教育手法として確立された、“帝王学”とよばれる全人的教育が存在した。その存在は歴史書として名高い『十八史略』にも記されている。人を使い、人を統べるにはどのような技法が必要か、君主として国を経営するにはどのような心構えでいるべきかなどのマネジメント論に加え、自らの運命と国の行末を知るための秘術として「算命学」に代表される占術が学ばれていたのだ。占い好きの経営者は多いというが、それも素直に納得できる。

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 ※こちら(↑)は帝王…ではなく「聖帝」。帝王学を学んだからといって、このような御仁が出来上がるわけではない。

 

帝王教育の要諦は、あくまで幼少時から家督を継承するまでの段階で施されるものだ。つまり、統治者になってから勉強するのでは遅すぎるということ。だからこそ自らの人生をコントロールし、今よりも良い境遇を求め成功を望む者は、早い段階で「使用人」の論理から脱却し帝王学を学ばねばならない。使用人の思考のまま、人生の支配者にはなれぬのだ。

 

自らの人生を自らの手で切り拓き、自分の人生を謳歌するためにも帝王学を学ぼう。なにかに妥協しながら生きるよりも、人生を自分のものにするためのバイブルとなる名著を紹介する。理解できずとも、読んだか読んでないかで圧倒的な差になるだろう。

 

易経

『老子道徳経』・『荘子』と合わせて「三玄の書」と呼ばれ、儒教の基本思想となる五経の筆頭に挙げられる経典。“易”者というと占い師のことだとお解りになるあんたは博識だが、易占いの原典である本書には哲学・思想のバイブルとしての側面と、占術のテキストとしての側面があり、それらが入り混じっているために大変に難解な内容になっている。しかし学問や読書をしていれば、なぜか誰もがいつかは辿り着いてしまうという奇書として、不思議な魅力に溢れた古典中の古典。世界や人間の成り立ちに迫る、帝王学の中心を担った一冊。さらに占術としての役割を突き詰めたものが算命学で、後に四柱推命などと交わって運命学の体系が形成されることになる。

易経〈上〉 (岩波文庫)

易経〈上〉 (岩波文庫)

 
易経〈下〉 (岩波文庫 青 201-2)

易経〈下〉 (岩波文庫 青 201-2)

 

 

韓非子

荀子の流れを汲む諸子百家のひとつ、法家の代表的人物による国家運営の教典。敵国であった秦の始皇帝が高く評価し、後に三国志で有名な諸葛亮が幼帝劉禅の教材として韓非子を献上したという逸話も残っている。「法」は君主による統治のための道具とした上で、法を至上とした法治国家の建設を説いた。性悪説に基づいた信賞必罰の徹底と、法と術(人心掌握術)による国家運営(法術思想)という徹底したリアリストの視点から、統治者のハウツーを示したものになっている。「引き寄せの法則」などに代表される無償の愛も大事だが、同時に支配者として冷酷な論理も持ち合わせておく必要があるのだ。

韓非子 (中国の思想)

韓非子 (中国の思想)

 

 

孫子

当ブログでも「ブラジリアン柔術に効く『孫子の兵法』」という記事をシリーズ化して、その思想がどう実際の生活や勝負ごとに役立つのか解説しているが、孫子は軍事的側面からいかに敵国を支配するか、自らの軍をどのように統率するべきかというノウハウが簡潔にまとめられた、“生き残り”のための実践書だ。その下敷きには易経や韓非子にも通底する老荘思想が埋め込まれており、リーダー、指導者がどのような世界観のなかで状況をコントロールしなければならないのか、人類普遍の叡智がつまっている。古今東西のビジネスリーダーは必ずといっていいほど読んでいる、勝負哲学のバイブル。

新訂 孫子 (岩波文庫)

新訂 孫子 (岩波文庫)

 

 

マキャベリの君主論

ギリシア・ローマ時代からの歴史上の実例を数多く挙げながら、その成功・失敗理由を挙げて実証的に「君主」としてのあるべき姿を説いた、イタリア政治学の聖典。フィレンツェ共和国の衰退に重ねるニコロ・マキャヴェッリ自身の焦燥、そして強靭な思想が絶対的な君主像を浮かび上がらせ、不可分だった政治と倫理の問題を見事に切り離すことに成功した。「権謀術数」の原典ともされるが、チェーザレ・ボルジアに触発され、軍事力に裏付けられた強力な君主による独裁的政治を提言している。後にルソーが社会契約論において、君主論は「共和主義者の教科書」と称賛している。

君主論 (岩波文庫)

君主論 (岩波文庫)

 

 

マッキンダーの地政学

地政学は国際政治学を形成する一学派で、本書はそんな国際関係における動態力学的な把握を示し、世界に衝撃をあたえたイギリスの地理学者による地政学の金字塔。不確定変数が無数に存在する国際政治の論理を分類し、モデル化しようとする地政学の試みは、社会科学の非主流に過ぎなかったが、この論文によってアカデミズムとも結びつき、為政者にとって必須の知識になった。「東欧を支配する者はハートランドを制し、ハートランドを支配する者は世界島を制し、世界島を支配する者は世界を制する」の一文は有名だが、思考の抽象度を上げ、視野を高めるのに役立つ。大国の合理的な振る舞い、歴史のダイナミズムが理解できる名著。

マッキンダーの地政学ーデモクラシーの理想と現実

マッキンダーの地政学ーデモクラシーの理想と現実

  • 作者: ハルフォード・ジョンマッキンダー,Halford John Mackinder,曽村保信
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2008/09/27
  • メディア: 単行本
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