近未来航法

予測不能な現代社会を生き抜く知的サバイバル術

誰かに心酔するってのは“覚悟”が必要だ

最近、刺激のある知的インプットが少なかったので本屋に寄ってみた。なんだか好奇心を掻き立てるような魅惑的なトピックの本があんまし刊行されてないんだよな…

 

それにひきかえ国際情勢や外交もの、経済関連の解説書のたぐいは次から次へと新しいのが刊行されている。世の中の趨勢を伝えるものだから新たな動きに合わせて出さないとダメなんだろうが、それだけ刊行物があるってことはそれを支える需要もあるってことだ。

 

日本人って、そこまで世界の動きを注視しなきゃいけないほど投資意欲が旺盛な人種でもないし、そもそも国内の株式市場の出来高を支えてるのは外国資本が大勢だ。一体どーゆー人が、どんな目的のために読んでるんだろ。国際情勢に敏感に反応しなきゃならない必要性がある職種て、世の中そんなに多いものだろか?

 

でも、まあ今オピニオンリーダーって言われてる人たちが池上彰や佐藤優だったり。三浦瑠麗だったり。いわゆるインテリジェンス筋の人たちが世論をひっぱってるわけだから、そのフォロワー層というのが確実に存在している。でも考えてみてほしい。彼らは情報という分野におけるエキスパートだからこそ、彼らならではの職能や流儀が必要なわけで。皆が皆、そのような教養が必要なわけじゃないんだ。

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はたして世界を知ることがそんなに必要なことなのか。それを知ったからって何ができるというのだろう。彼らはしきりに世界の動きを予測しろって煽るわけだが、はたしてその言に従い世界情勢に通暁する教養を身に付けた結果、人生の糧にできてる人ってのがどれだけいるもんだろうか。そこまでして世界の動きを把握することが一介のサラリーマンたちにとってどれほどの有益性があるというのか。

 

国際政治や金融、経済学というのはどこまでいっても虚学に類する領域だ。どんな慧眼を以ってしても非線形の摩擦や非合理性が介在するので、予測を的中させることなどできはしない。だから識者たちは後出しジャンケンよろしく、ある部分にだけフォーカスして、自らの予測を正当化しようとする「後追いバイアス(hindsight bias)」や「自己奉仕バイアス(self- attribution bias)」を持ち出すのはもはや日常の光景だ。

 

彼らオピニオンリーダーの言葉に従って情報オタクと化す前に、国際情勢や金融の動きが日常の自分たちの生活にどれほどのインパクトを与えているのか今ひとつ考えてみた方がいい。外の世界の大きな物語や陰謀論に思いを馳せるより、今一度、日常の目の前の生活にフォーカスし直すべきだ。イメージでしかない有事に備えるよりも、実際に存在する問題に最大限の力で向き合った方がよっぽど生産的な生き方といえるのではないだろうか。

 

盲目的な成功哲学や安直な言葉に集約される自己啓発ってのも気をつけた方がいい。個人の実体験にリンクしない言葉ってのは実に無力なもんだわ。それを知ったら皆が成功するなんていう普遍的な法則性や習慣なんてものは存在しない。その人だからこそ、そこに至った過程があるはずで。なんとなく言語化できないけどもその感覚は経験上わかる、そういう実感が湧かないものは警戒するべきなのだ。

 

何かを信じることで、人が救われたり強くなったりすることも否定はできない。何かに迷ってる最中に出会う、耳障りのいい誰かの言葉や考え方は確かにあんたの人生を変えてくれるだろう。でも、その言葉は本当にその人が発している言葉だろうか。その人は本当に実践したすえに人生をより豊かなものにできてるんだろうか。

 

逆説的に言ってしまうと、ある人の言ってることを鵜呑みにする以上はその人の人生を追体験することはできるだろう。しかし、その人の人生以上のことは体験することができないってことだ。思考の枠組みに型をつけてしまうってことは、それ以上の発想ができないってことなんだよ。でも、その当の本人たちはそのスキルやマインドセットによって本当に人生を謳歌できているだろうか。このサバイバル社会を生き抜く、絶対的な“力”を手にできてるといえるのだろうか。

 

大切なことはあんた自身の過去の経験に耳を澄まし、今何が必要なのかを徹底的に考えるってことだと思う。経験上の何かがその枠組みを本当に欲しているのなら直感を信じて迷わずそれに従えばいい。でも経験のともなわない盲信は、あんたを単なる自己啓発マニア教養バカに仕立て上げてしまう。学ぶという姿勢や意欲は大事だけど、どっかの誰かが言ってたなんていう伝聞に踊らされることが一番の人生の浪費だ。判断基準と思考様式を誰かに依存して生きるなんてことほど虚しい生き方ないと思うワケよ。

 

『世の中に飛びかっている情報ってものには必ずベクトルがかかっているんだ。つまり誘導しようとしていたり、願望が含まれていたり。その情報の発信者の利益を図る方向性が付加されている。』

ー バグダッシュ中佐の言葉:銀河英雄伝説より

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誰かに心酔するってことは、それなりの覚悟が必要だ。何かを信じることなしに人は生きていけない。でも、世の中には「影響されやすい人たち」ってのが相当数存在する。その言葉を発することで得をする何者かが対極にいる。その存在を感じながら、ときに参考にする、受け流すに留めておくってことも同じくらいに重要なんだって話。なればこそ、自らの経験から導き出した自分だけの武器を持て!