近未来航法

予測不能な現代社会を生き抜く知的サバイバル術

心と身体が浄化する禅の食事法 ~グレイシーダイエットRemix~

ここ十年のあいだに自分自身の境遇には驚くほど大きな変化があった。企業人としての成功、そして起業、精神疾患、経済社会からの逃避、運命的な出会い、経済人としての再起、柔術との邂逅…。波乱万丈と云ってしまえば些か陶酔的だが、目まぐるしく変わる環境の変化にともなって、随分とライフスタイルも変化してきた。紆余曲折を経て思うことは、健全な思考は健全な肉体にしか宿らないということだ。

 

人間は自分が食べたものでできている。簡単な真理なのだが、現代人の多くはこの現実に目を向けようとしていない。食べたものはエネルギーとなって身体のなかを還流するのなら、そのエネルギーは本当に正のエネルギーだろうか。食べるものによっては負のエネルギーにもなり得る。たとえば卵を生むためだけに生かされ、人工的に操作されて24時間のあいだに何度もの昼夜を繰り返すストレスフルな鶏が生む卵は、はたして健全なエネルギーとなるのだろうか。

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この“医食同源”の考え方を教わって、考えるようになってから、食事というものをライフスタイルの中心に据えるようになった。昔から興味をもっていた禅の教えをベースに、近年ではグレイシー柔術に伝わる健康管理法、グレイシーダイエットを取り入れながら独自に食事法をアレンジしてきたのだ。その結果、おどろくほどに体質が改善し、健やかな日々を送れるようになった。大事なことは食べるものに指針を持つ。それに尽きるのだが、ここでは俺自身の指針を明かすことによって、あんたにも何かしらの参考になればと思う。自分に不満があるなら食事を変えろ!声を大にしてまず云いたいのは、兎にも角にもそーゆーことだ。

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©奈良原一高

 

禅仏教の総本山である曹洞宗の開祖、道元はその教えのエッセンスを凝縮した『正法眼蔵』でも食事に関する記述に紙面の多くを割き、坐禅を中心に読経、作務、睡眠にいたるまで雲水(修行僧)たちの厳格に定められた生活の数ある要諦のなかでも、『典座教訓』や『赴粥飯法』など食事に言及した著書が驚くほど多くを締めている。大切なことは日常の営みの中にあると説いた道元が、禅の修行の中でもっとも重要視していたのが食事だったのだ。

正法眼蔵〈1〉 (岩波文庫)

正法眼蔵〈1〉 (岩波文庫)

 

 

これは道元自身の経験にもとづくエピソードに由来するところが大きい。嘉定16年(西暦1223年)に修行のため宋に渡った道元だが、着岸と同時にひとりの老僧と出会う。日本から運んできた積荷の食材を求めて船に乗り込んできたのだが、自分はとある寺の典座(調理・給仕役)でわざわざ20キロの道のりをやってきたと云う。なにか振る舞おうとする道元に老僧は「食事の準備があるから」と申し出を辞退する。それに対し「それなりのご経験があるのだから、坐禅修行に打ち込み公案の勉強に専念されるのが年長者の特権でしょうに、なにゆえ台所仕事に精を出されるのですか」と問うと老僧は大笑いして、こう答えた。「あなたはまだ修行というものがおわかりでない。そもそも文字というものをご存知ない」と。

 

そして、数カ月後に老僧が務める寺院で2人は再開する。道元が「あの時、あなたが問うた文字とはなんですか?」と聞くと、老僧は「1,2,3,4,5、これが文字です」と答えた。「それでは仏道修行とはどんなものですか?」と聞くと、「この世界は何もかもがむき出しになっている。すべてが修行なのです」と答えたという。ここで道元は気づいた。典座役というのは喜心・老心・大心の3つがなければ立派に務まらない、重要な仕事なのだと。如何だろう、なかなか含蓄ある話ではないだろうか。

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©奈良原一高 

 

原則① 菜食

さて、お寺の食事というと精進料理を想起するものだが、禅における食事というのは少食+粥+菜食が基本になる。道元はことのほか粥を神聖視していた。それは粥が胃腸に負担をかけることなく、もっとも効率よくエネルギーを吸収できる万能食だからだろう。古来より農耕民族だった日本人の腸は、穀類から栄養を吸収することに最適化しているので狩猟民族の西洋人よりも長い。つまりは動物性タンパク質よりも野菜や穀類から栄養を吸収したほうが体質的にいいのだ。とはいえ、完全菜食に抵抗がある人は週に3回程度は肉類を入れてもいいだろう。というのも、そもそも大陸の仏教は厳密に肉食を禁じているわけではない。要は自分で食べるために殺生をするな、というところに仏教の菜食主義は起因しているのだ。

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精進料理のベースになったのは、神饌(しんせん)と呼ばれる神社の神さまへのお供え物だ。そこには自然や神と一体となるために行事に取り入れられた食という思想性がある。野菜や穀類、植物の持つ強い力を体内に取り込む、少量でも持続的に栄養を補給したほうが自然治癒力の底上げに効果があると日本人が体験的に獲得してきた知恵なのだ。現代の俺たちにできる食禅は菜食の比重を増やす、刺激物や香辛料を控え、消化を第一に考えたやさしい料理を採り入れるということだ。自然の力を取り込むために、白米を玄米にされることをオススメする。そうすることでよく噛む、というのも容易に実践されよう。

 

原則② 少食

多くの人にとって最大の苦痛となるのが「少食」だろう。よりよいものを、より少なく食べる。ここには食事も修行のひとつと捉える、禅仏教の思想の本質がある。食べることも深い実践として、六識(見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる、考える)を総動員してよく噛み、素材を堪能することで消化作用を高め、エネルギーの吸収を高めることができると考えているのだ。よく噛んで丁寧に食べることで食欲中枢を満たし、量への執着をも手放す。そうすることで購入する食品が少なくなれば、少し高価でもオーガニックな素材を買う余裕も生まれる。量の目安は一概に云うことはできないが、腹七分目程度が適量だろうか。

 

原則③ 粥

禅が重視する粥については週1回程度、朝に食べるとよいだろう。できればレトルトなどではなく調理するところから時間をかけて、食べ終わるまでの朝のひとときを満喫する。食べ終わったと同時に自然への感謝の気持ちを忘れない。これを習慣化するだけで、より人生が豊かなものに感じられることを保証しよう。

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原則④ なるべく新鮮なものを

グレイシーダイエットとはグレイシー一族が生み出した独自の食事法、健康管理法だ。ダイエットと呼称するものの、それは痩せるための食事ではなく、食べ物のコンビネーションによって血をきれいにし、効率的に吸収することで身体を強くするという、基本的な発想は精進料理に通ずるものがある。いくつもの原則が存在するが、なかでも特徴的なのは「食べ合わせ」を重視している点だ。これとこれは一緒に食べてもOKだが、これとこれはNGというように細かに規定されている。

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しかし、地域によって穫れる作物は違うし食文化も異なるので、地球の裏側の日本で完全にコピーしようとすると無理がある。食べ合わせによる健康増進の確たるエビデンスがあるわけでもない。そこで第一の原則はなるべく新鮮な食材を摂り、しかもそれがオーガニックであれば最良だ。素材にはできるだけ、こだわりを持とう。そして調理もできるだけ煮る、焼く、蒸すものにし、味付けも塩か醤油ベースのシンプルな調理にすることが重要。

 

原則⑤ 穀類は1種類だけ

日本では主食が米なので穀類があまり被ることはないが、グレイシーダイエットでは炭水化物の摂取に関して厳密に1種類だけと定められている。たとえば、お好み焼き+ご飯 や ラーメン+炒飯 というのは最悪だ。気をつけないといけないのが豆類。一般的に豆類は健康にいいと言われているが、豆を食べるなら米は抜かなければならない。食卓の定番、枝豆などは要注意。ただし、同一の原料ならばOKだ。たとえば、パンとパスタというように小麦を原料としているなら問題ない。

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原則⑥ 果物

グレイシー一族はとにかくフルーツをよく摂る。とくに新鮮な果物をフルーツジュースにしてことあるごとに飲むのだが、消化を考えて皮などの繊維質が入らないように裏漉しするという念の入れよう。自然の力をそのまま採り入れるという発想はまさに食禅に通ずる。これに習って、できるだけフルーツは摂るようにしよう。ただし、ここでも注意事項がある。果物と油類、糖類は一緒に摂らない。また酸味の強い果物はできるだけ単独で食べ、週3回以上は摂らないようにするのがグレイシー流だ。

 

原則⑦ 間食

ここまでの原則を見ると、やはりどうしてもタンパク質が不足しているように思えてしまう。不安であれば、チーズを摂取するといいだろう。実際にグレイシー一族もチーズを大量に食べる。ただし消化を考えてクリームチーズかカッテージチーズを常用しており、臭いなどの刺激の強いものは口にしない。また、基本的に牛乳そのものは摂らない。人間のほか大人になってミルクを飲む動物がほかに存在しないからだという。

 

これらの原則に加えて、どうしてもお腹が減った場合、俺はチョコとインカベリーという南米原産のスーパーフードを常用している。インカベリーは「ベリー」といいながら、実はホオズキ科の多年草なので野菜に近い。それでいて抗酸化成分β-カロテンをはじめ、ビタミン、ミネラルを豊富に含み、血流をサラサラにする効果があるのだ。食べ過ぎると鼻血が出るが、ちょっとした間食にオススメだ。ちなみに間食にもルールがある。4時間以上の間を置かないとダメなのだ。

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最後に

以上が、禅とグレイシー柔術の知見から俺が組み立てた食事法になる。いきなり、これを実践しようと思うとかなりの思い切りが必要になるだろう。まずはできるところから、無理なく取り入れてみよう。そうすることで身体のなかに増幅するエネルギーが感じられるようになってくる。頭や心の問題も、まずは身体から。いざ実践されたし!

 

※以下は参考文献

 

心と体が最強になる禅の食: 道元禅師が説いた「食の教え」は人生を確実に変えていく

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