近未来航法

予測不能な現代社会を生き抜く知的サバイバル術

読書好きによる読書家のための、そそる必読書リスト

ある程度の本を読み込んでいる、ちょっと“通”な読書人にとって次に何を読むべきかというのは常に付き纏う問題だ。それなりの知識と教養を持っているだけに、このテーマに対してはここらへんの本だなという方向感覚は身についているけど、問題は今の自分に必要な知識、自分が求めている物語は何なのか、ということになってくる。

 

そんなときに重宝するのが書評家や知識人たちによるブックリストで、選者によっていい具合に偏りがあり、独自の目線で選ばれた知る人ぞ知る名著、なんかを見つけることができたら、もう読書家としては天にも昇る心地だ。では選者として誰を軸にするべきか、というのが専らの悩みのタネだったりする。

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そこで今回はちょっとした本好きにとって、さらに読書の幅を広げてくれそうな、書物への愛に溢れた読書ガイドやエッセイ集、解説書を選んでみた。なるべく複眼的に、意外に知られていないであろう書籍から真性読書家が敬遠しそうな近刊まで選定したので、ぜひ参考にしてみていほしい。

 

■知的野蛮人の旅行記に見る、次世代の姿と新たな教養

高城剛 『多動日記』

“ハイパーメディアクリエイター”なる肩書で熱烈な信者を持つ、今ひとつ素性の知れない御仁だが、実はかなりの教養レベルを備えた知識人である。スピリチュアル系のぶっ飛んだ知識なんかもお持ちなので、胡散臭さを感じられる方もいらっしゃるだろうが、この人独自の世界や社会の見方、未来への示唆とヒントに溢れたエッセイ集だ。常に移動して旅し続け、ノマドを地で行く特異なキャラクターが旅の合間に綴った、躍動する思考の軌跡が存分に堪能できる慧眼の一冊。新時代の知の姿が理解できる。

  

■写真評論家のフェティシズムを凝縮したブックガイド

飯沢耕太郎 『危ない写真集246』

国内でも随一の写真評論家であり写真コレクターでもある飯沢耕太郎が、自身の秘蔵、愛蔵本を開陳したかなりマニアックな1冊。その表題のとおり、死体やフリークス(畸形者)、幼女などエログロで倒錯的な偏愛嗜好を前面に出し、なかなか市場に出回ることのない貴重なレア写真集をこれでもかと掲載。社会の暗部に蠢くダークな美から、世界を見るレンズがけっして一つではないことを思い知らされる。飯沢自身のこれらの写真集への思いも綴られており、人間の業の深さを思い知らされる。

危ない写真集246 (夜想・Baby)

危ない写真集246 (夜想・Baby)

 

 

■時代を挑発したのは、詩人の革命的な“言葉”だった!

ヤリタミサコ 『ビートとアートとエトセトラ』

昨今、戦後日本の大きなターニングポイントとなった「1969年」という年号が俄に注目されているが、世界的に見ると所謂ビート・ジェネレーション(ビート世代)と呼ばれた異端者たちの出現が端初として考えられる。その中心的存在、アレン・ギンズバーグは抑圧的な社会体制に溢れ出る言葉によって反旗を翻し、カウンターカルチャーに革命を起こした。同時期に活躍した前衛的なモダニズム詩人の北園克衛、そしてカミングスを交え、彼等の詩から同時代性とその功績、新たな視点を自身も詩人である著者が抽出した、詩の言葉の解体新書。

ビートとアートとエトセトラ―ギンズバーグ、北園克衛、カミングズの詩を感覚する

ビートとアートとエトセトラ―ギンズバーグ、北園克衛、カミングズの詩を感覚する

 

 

■ベストセラー作家の創作の秘密に迫る文学談義

村上龍、村上春樹『ウォーク・ドント・ラン』

村上春樹と村上龍という2人の偉大すぎる「村上」による対談本なのだが、あまり一般的に知られていないであろう名著。1980年代の、まだ大ブレイク前夜の2人が若々しさを漂わせながら、それぞれの作品、それぞれの趣向や作家論、執筆スタイルについて、赤裸々に語っている貴重な内容。何故にこの2人が小説家として大成したのかが読み解ける。物書きを志す人なら必見の内容といえるだろう。珠玉のコンテンツであるにも関わらず、絶版のため中古市場でやや高値で取引されているのが玉に傷。

ウォーク・ドント・ラン―村上龍vs村上春樹

ウォーク・ドント・ラン―村上龍vs村上春樹

 

 

■売れっ子・編集者の思考回路が惜しみなく明かされた自叙伝

芝田暁 『共犯者-編集者のたくらみ-』

この男、豪放につき注意。出版業界にベストセラー・メーカーとして君臨する男がいる。名は芝田暁。過去に携わった書籍は、梁石日『血と骨』、浅田次郎『プリズンホテル』、田口ランディ『コンセント』、松井計『ホームレス作家』、新堂冬樹『無間地獄』など、その冊数は実に215冊。そんな彼の人生もまた波乱万丈だった。キャリアの絶頂にいた幻冬舎を辞めて自身の出版社を立ち上げたが、あえなく倒産。そんな稀代の編集者が自身の成功と挫折の真因を語った圧倒的熱量の1冊。本好きなら、痺れること間違いなし。

共犯者 -編集者のたくらみ-

共犯者 -編集者のたくらみ-

 

 

■成功したいなら伝記を読め!実践的読書のすゝめ

成毛眞 『この自伝・評伝がすごい!』

ビジネス界隈でも当代随一の読書家として人気の成毛眞さん。昔勤めていたIT企業時代の上司が成毛さんのかつての部下だったというご縁から、主宰されている「大人げない大人」の飲み会にご一緒させていただいたりもしたが、なんともIQの高いクリエイティブな経営者だ。手っ取り早く功利を得たいなら伝記を読め、と俺は若手に常々言っているのだが、成毛さんの視点で血肉になった自伝・評伝のブックリストを出版されている。イーロン・マスクから岡崎慎司まで有名無名かかわらず、時代を動かす偉人の人生を追体験する20冊が掲載。

この自伝・評伝がすごい!

この自伝・評伝がすごい!

 

 

■人生に迷いが生まれたら、人類普遍の古典に学べ!

柄谷行人,他 『必読書150』

世の中でもっとも品数の多い商品は書籍だと言われているが、100年、200年と読み継がれる名著というのは実はそう多くはない。いつの時代であろうとも人間の悩み苦しみというのはそうは変わらないし、願望や欲望もまた然りだ。柄谷行人、浅田彰、島田雅彦、奥泉光といった第一線の知識人が編集委員となり、人生の指針となり得る不変の聖典150冊を選出。一部では掲載本がスタンダード過ぎるとの批判もあるが、それだけいつの世も人間が“読むべき傑作”というのは不変なものだろう。

必読書150

必読書150

  • 作者: 柄谷行人,岡崎乾二郎,島田雅彦,渡部直己,浅田彰,奥泉光,スガ秀実
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2002/04/01
  • メディア: 単行本
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■番外編

佐々木中 『取りて読め。筆を執れ。』

書籍ではないのだが、最後に個人的に参考にさせてもらっているブックリストを共有しておく。法制史家ルジャンドルを導き手にラカン、フーコーを踏破し、ヒップホップやダンスなどのサブカルチャーをも縦横無尽に語る異端の哲学者、佐々木中によるブックガイド40選だ。『必読書150』のような古典的名著に加え、佐々木中独自の視点で選んだ現代小説も多く含まれており、一味違った選書になっている。

yotsuya-shobo.hatenablog.com

 

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