近未来航法

予測不能な現代社会を生き抜く知的サバイバル術

成功者…それは価値を生み出す人のことである

よく云われる、「お金持ち脳」と「貧乏脳」というものがある。「成功脳」と「失敗脳」なんて云い方をしたりもする。俺の専門分野であるお金を増やす技術においても、技術を身に付ける以前に、思考の鋳型としてのマインドセットを先に脳にインストールした方が、圧倒的な成果を手にする人が多い。技術や身体的特性は短期間で変えることはできないが、思考の転換というのは即効性があるのだ。

f:id:funk45rpm:20190828160110j:plain

 

ところが巷で云われている「成功脳」の思考様式というのは、どうも抽象的すぎるし、どこか宗教的な臭いがする教訓ばかりだ。「貧乏脳は稼ぐことを卑しいと考える。金持ち脳は稼ぐことを尊いと考える」といった類いのものだ。そして、これだけ多様な人種がいる世の中で断定的すぎる印象さえ受ける。たとえば、曰くお金持ちはメモ好きだというもの。これなんかは、「そういう人もいる」というだけのこと。残念ながら、みんながみんな共通している特徴ではないのだ。

 

しかし俺の顧客や友人でもある富豪たちと長年付き合っていると、これぞ成功者といわんばかりの明確な行動的特性が見てとれるのである。それは何かというと、彼らはどこにいようとも、いつでも価値を生み出すことができる、ということなのだ。瞬間的に、まるで手をかざすとサラサラとあふれ出す錬金術師の砂金のように、ライブで価値を創出させるのである。事前に準備をするわけでも、先延ばしにするわけでもなく、即興的にやってしまえるのだ。

f:id:funk45rpm:20190828160307j:plain

 

かなり抽象的な話のように思えるだろうから、譬え話で説明しよう。たとえば今ここ日本の都市のど真ん中で、100円の飲料を売りつけようとしているセールスマンがいたとして、彼の飲料は売れるだろうか。答えはおのずと否だろう。どこにいっても飲み物は売っているし、季節的にも喉を潤す必要性をさほど感じない。ところが突如、ロケーションが誰もいない砂漠の真ん中に遷ったとしよう。カンカンに照りつける太陽に体温よりも高い気温で、茹だるような暑さ。そこへ颯爽と現れたセールスマンは、まるで天使のように見えることだろう。その手には魅惑の飲み物。もはや100円どころか1万円出してもその飲料が欲しいはずだ。

 

飛躍した譬えではあるが、これと同じことを彼らは平然とやってしまえる能力を備えている。必要とする人間さえいれば、瞬時にどんなものにでも価値を付与し、商品を創造することができる。それもなんの前触れも前提もなく、その場で。そういう光景を幾度となく見る中で、これこそが「成功脳」というものなのだと思い知らされた。彼らからすれば入念な下準備やヒアリング、打ち合わせ、物事を先延ばしにすることはサラリーマンがやる非効率なこと。必要なときに必要なだけ、悩みや願望にマッチしたソリューションをその場で提供することが手間要らずで、労働に縛られない最良の時間管理術なのだ。

f:id:funk45rpm:20190828160431j:plain

 

どのようにすれば、このような能力を身に付けることができるだろうか。一つにはその場にある悩みや願望、フラストレーションにフォーカスし、それらを解消できる価値を見極める力といえるだろう。簡単に「価値」と云ってしまえるほどに、日常で常用しているこの概念を定義するのは実は相当に難しい。たとえば『国富論』を著した近代経済学の父、アダム・スミスは価値をこう定義した。野原にリンゴの木が1本立っていて、リンゴが食べたいがために木に登り、実をもいで元のところへ帰ってきた、それまでに費やされたその人の労力こそが「価値」なのだ、と。

 

また、マルクスの資本論はこうはじまる。「資本主義的生産様式の社会の富は、商品の集積として現れる」。そして商品には使用価値と交換価値があり、この交換価値を測るために貨幣が生まれた。このように、資本論も価値論からはじまるのだ。

 

価値とは、受け取る側の喜びだ。その価値の本質を見誤ったがために、しばしば人とのあいだに齟齬が生じ、炎上したりもする。価値とは必ず受け手があってのもので、価値は受け手を選び、受け手によっても価値は変化する。直感的にこの力学と作用を駆使して、錬金術のように価値を生み出すことができるのは、稀有なマーケティング感覚を持ち合わせているからであろう。しかしその実、彼らは受け手の悩みや願望にフォーカスしているにすぎない。これらは以前の「ビジネスで大切な、たった3つのこと」で紹介した能力でもあるのだ。

www.sandinista.xyz

 

もう一つは、投資の思考様式を学ぶということだ。投資の本質は企業の価値を見抜き、上がるものを買うということ。しかし市場というのは必ずしも効率的に機能しているわけではなく、様々なバイアスがかかり、クラウゼヴィッツの云う“戦場の霧”のように価値を覆い隠してしまうものでもある。そこに価値と価格(株価)の乖離が生じ、投資家が莫大な利益を上げる隙が生まれる。価値を見極めるということ、瞬時に価値を生み出すという成功者特有の行動特性はこうした投資特有の考え方にも通じているのだ。

 

起業家よ、“価値”を生み出せ!

f:id:funk45rpm:20190828160730j:plain

 

国富論 ―まんがで読破─

国富論 ―まんがで読破─

  • 作者: アダム・スミス,バラエティ・アートワークス
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2013/08/02
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログを見る
 
資本論 ─まんがで読破─

資本論 ─まんがで読破─

  • 作者: マルクス,バラエティ・アートワークス
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2013/06/28
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログを見る