近未来航法

予測不能な現代社会を生き抜く知的サバイバル術

“余白”の詩学 〜ゲーリー・スナイダー『終わりなき山河』〜

某所にもとめられて書いた、約500文字の書評。 俺が単一の書籍について語ることは少なく、公開するのもまた乙なものだと思った。この詩集は俺の人生においてもマスターピースといえる重要なものなので、ひとりでも手にとってみてくださる方がいることを願う。以下、原文ママ。

 

終わりなき山河

終わりなき山河

 

 

人生を歩むなかで、それぞれの節目に必要に迫られて取り組んできたライフワークや様々な問題意識が、実は1本の線で繋がっていると感じることがよくあります。私の場合、古代中国の自然観や老荘思想、陰陽五行を生活実践の場で活用しているので、生起する物事ひとつひとつに必然性があって、起こるべくして起きているような感覚をよく体感します。

 

そうした自分のなかの心象風景が、『終わりなき山河』の詩の世界観と重なるのは当然のこととして、スナイダーのヴィジョンにもあきらかに生きとし生けるもの、地球がつくりだしたすべてのものは有機的に結びついていて、地球というフィールド自体が悠久の時間の流れから生まれた、一つの叙事詩であるという観念を強く感じさせられます。

 

自然の厳しさ、雄大さを前にした人間の営みのちっぽけさ。飽くなき欲望に突き動かされ付加し続けることで発展する人間社会に対して、引くことで見えてくる豊かな精神と自然の姿。簡素な言葉で大きな世界を視覚化する、見事な詩のダイナミズムに気付かされた1冊です。

 

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