近未来航法

予測不能な現代社会を生き抜く知的サバイバル術

情理を尽くせ!

「残念なことに、大半の人は生涯、食べていくだけで精一杯です。そんな中でも少数の人は人生を広げることに関心を持つ。そして、とてつもない成功を収めている人たち――経済的にだけではなく、人生のすべての面で成功しているごく稀な人たちは、人に奉仕することだけに全精力を傾けるのです」

ボブ・バーグ著『あたえる人があたえられる』より

 

 

有名な成功哲学や自己啓発などでよく語られる内容ではあるが、上の文章は結構重要な示唆が込められているように思う。大半の人は目の前の生活にしか目が行かないものだが、より意識の高い人は広い視野を獲得しようと勉学や自己研鑽に励む。さらに上の成功者といえる人たちになると、稚拙なエゴを捨てて、ただ人のために心から何かを為そうとする。これは俺自身が見てきた富豪たちの実像でもあり、紛れもない真実だ。個人差はあれど、成功者はみな少なからず利他的なマインドセットを有しているものなのだ。

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今の世の中で決定的に欠如していること。それは情理を尽くすということではないかと思っている。情理を尽くすとはどういうことか。ネット上のおもだった辞書を牽くと、「当事者の気持ちをよくくみ取り、同時に道理にかなうようにする」こと…とある。我が身の行いを鑑みても、当事者の気持ちをくみ取ること、道理にかなうようにすることさえも能わず、自己中心的な思考になりすぎてしまい、「情理を尽くす」という感覚を忘却しかけていることを自覚してしまう。

 

朝方の満員電車で、あたかも大量生産の特売品を袋に詰め込むかのように背中で人を押し、後ろを振り返るでもなく我先に電車に乗ろうとする人々。確率論で大量にスパムまがいのメールを送信し、具体性のない宣伝文句で人間心理を煽ろうとする不誠実なウェブ上の販売業者。国民や市民の血税によって生かされ安定した生活を謳歌しながら、真に困窮した同朋ともまともに向き合おうとせずに無関心を決めこむ公僕たち…

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核家族やムラ社会の崩壊によって、誰も彼もが譲り合いや相互扶助の心さえ忘れ、利己的な振る舞いが目立つように思える。実際には観光などで訪れた外国人の方がそういった国民性を敏感に感じているようで、国連が2019年度版の世界幸福度ランキングを発表したのだが、トップはフィンランドで、デンマーク、ノルウェーと例年のように北欧諸国が続く。日本は過去最低の58位で、採点の各項目を見ると健康寿命では2位、GDPは24位と上位だったものの、自由度では64位、寛容さは92位と、寛容さが欠けた社会について指摘されている。

 

ある記事では街の声として、いくつかの日本人の振る舞いを例示している。「外国人の方から声をかけられてもスルーしている人がいる」、「SNSでつぶやくのって自由だから、そんなに周りが反応しなくてもいいのかなと。炎上させてナンボっていう人もいる」、「(通勤通学)ラッシュの時に、みんな自分のことしか考えていないのか体当たりとか多いし、線路に財布を落としちゃったことがある。日常の公共の場でのルールが緩くなっているのかなと思う」、「ちょっと(肩が)当たっただけで睨みつけられたり」などなど。

abematimes.com 

他人の行いを許せないのは、自分の心が貧しい証拠。いつしか日本人は、かつての日本人たる美徳を忘却の彼方へ追いやろうとしているようだ。もちろん様々なことに起因するのだが、精神的な余裕を無くし、心のゆとりを持てずにいることが大きな原因ではなかろうか。目の前のことだけを追って固定化された視点は、かぎりなく独善的な価値観にしかフォーカスしなくなる。そういうときは従来の視点から一歩下がって、自分の行いや取り巻く環境を俯瞰することが重要だ。自分のやることに万能感を持ってしまっているのなら、自分という存在のちっぽけさ、無力さを知ることだ。何者でもない自分を理解する。人は生きているのではなく、生かされているのだ。

 

経済的な成功も、自己実現もエゴを捨てることで拓かれる。それはつまり、人との繋がりや贈与の連鎖を知るきっかけにもなる。「自分が、自分が…」という観念から、周囲の人たちに自分が何をしてあげることができるかという世界観の切り替え。それを知ることで、はじめてこの世の不思議が見えてくる。その先に結果としての成功があるのであって、成功ありきの打算では意味がない。浅はかな世界観は絶対に見透かされる。単なる綺麗事のようにも聴こえることだが、目的と手段は決して取り違えてはならないのだ。

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人にあたえようと思うと、人から素直に受け取ることが重要だ。素直に受け取ることができれば、自分が人にあたえるべきものも見えてくる。意外なことに、人間というのは素直に受け取るということがなかなか出来ない生き物らしい。もちろん、ここで「受け取る」といっているのは、物質的な何かをもらい、「ありがとう」と返すことを意味しているのではない。人との繋がりのなかで、自分が影響されている何か、自分が受けている恩恵としての何かを感じ取る、ということだ。
 

この「見えないものを感じ取る」力は決して、霊的な意味だけでなく、運命学的にも意義が大きい。だからこそ、成功者といわれる人たちは神さまとの付き合い方が上手く、また大事にしている人が多いのだ。独善的な思考で成り上がった成功者もいなくはないが、それはかぎりなく天才的な商売勘と時の運によるもので、独りよがりな成功は長続きしない。飛び抜けた才があるわけではない凡人が何かを成し遂げるには、人との繋がりを大切にし、人を動かす、人に動いてもらうということなしには絶対に不可能なのだ。

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だからこそ、自分を取り巻くあらゆる人との繋がりに

情理を尽くせ!

一期一会の人との出会いを無駄にすることなく

情理を尽くせ!!